「ものしりはかせはしんだ」
インターネットがこれだけ普及した現代では、たくさんの知識を覚えている、ということについてはあまり意味がないという。たいがいのことはググれば分かってしまうからだ。つまり「記憶力」より「検索力」のほうが重要なスキルということらしい。
わたしは今働いてる会社では法律関連の仕事をする部署に所属している。会社自体は製造業なのだが、製品に関しての法的な問い合わせが社内外問わずしょっちゅうあり、そのための仕事を専門にこなす部署である。
あるとき、社内のとある部署から法の手続きについて問い合わせの電話があった。
「お役所に出す書類の整備に追われているが、いかんせん門外漢なので分からない。あなたの部署のA部長なら勤続40年のベテランなので知っているはずだ、教えてほしい。」という。
A部長は法務関連で長く勤務している長老クラスのベテランで、法知識に関しては社内では右に出る物がいない人物である。
A部長がさっそく問い合わせに応じたのだが、どうやら様子がおかしい。折り返し連絡する、と答えて電話を切ってしまった。どうも質問の内容がかなりレアだったようである。
内容を聞いてみると確かに少しややこしく、扱う機会もほとんどないマニアックな内容の問い合わせであった。
A部長はすこし調べてくる、といって書庫にこもってしまった。
絶大な信頼を誇るA部長でさえも困らせる問い合わせとは何たるや・・と気になってわたしは思わず自分の仕事でもないのにひとり調査を始めてしまった。
使ったのは問い合わせの電話メモ、グーグル、そして政府が公開している法律のデータベースサイトの3つ。もしかするとA部長より早く答えを見つけられるかもしれない・・・
そして30分後・・・わたしはA部長に対して法の手続きについて解説をしていたのである。
わたしがやったことは、関連がありそうな語句をキーワードに検索して該当する法律を見つけ出し、データベースサイトから条文を抽出しただけである。
なにも特別なことはしていない。というより、関連法をピックアップし該当する条文を参照する、という全く同じことしかしていない。わたしとA部長との違いは検索先が「脳内」であったか「インターネット」であったかだけである。
どれだけベテランであってもやはり人間の記憶力や処理能力には限界がある。今回の事例はいわば暗算と電卓との差、といったところであろう。
現代では検索力をフルに発揮すれば、キャリアが浅く素人に近い私のような人物でも長年のキャリアをもつベテランと対等に渡り合えるのである。
ざっくりと有り体に言ってしまえば、知識の集積力よりも、必要な知識をピンポイントでつなげるネットワーク力が重要、ということだろう。
もちろん実際のお役所の人間とのコネクションもあり、法的手続きの注意事項なども熟知しているA部長なので問い合わせ先に電話するときは、それらの「インターネット」にはない生の情報を「脳内」から思いっきりアウトプットして回答していたので先方はいたく感謝していたようだ。さすがA部長、といったところである。
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